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吉成カフェ"Zacばらん"(第七回)

 
吉成カフェ“ Zac(ざっく)ばらん”(Z:zest, A:action, C:coordination)と称し、
気楽なサロン形式の会を定期的に行います。
研究シーズを事業化するために参考となるような企画をしています。

【日 時】 2010年3月2日(火)18:00〜19:55
【会 場】 JSTイノベーションプラザ宮城 2階 交流ラウンジ
【テーマ】 世界2大半導体拠点の動向と戦略を探る!
【話し手】 遠藤 哲郎 氏 東北大学学際科学国際高等研究センター 教授
フランチェスカ ヤコビ 氏 IMEC研究所(ベルギー) 主任研究員
小池 淳一 氏 東北大学大学院工学研究科 教授(通訳)
【内容】  
 現在世界において、産学官連携が極めて効果的に機能している半導体研究開発・事業化拠点である「アルバニー(Albany)ナノエレクトロニクス拠点」(アメリカ東海岸)と「アイメック(IMEC)マイクロエレクトロニクス拠点」(ベルギー)の設立経緯、動向(発展経緯)、戦略等を、アルバニーで研究を行った経験のある遠藤教授と、IMECヤコビ主任研究員にお話を頂きました。それらのお話を踏まえて、産学官連携により地域から世界に通用する産業を創出する鍵は何かという論点を掲げ、質疑・応答、議論が活発に行われました。

 遠藤教授がお話された「アルバニーナノエレクトロニクス拠点」の設立経緯、発展経緯、戦略等は、纏めると下記のようになります。
(1) アルバニーの設立は、アメリカ西海岸のシリコンバレー(カリフォルニア州、中心会社インテル)に対抗して、IBMがニューヨーク州に働きかけて実現したという経緯がある。
(2) 2001年設立時の資金は150億円といわれるが、その1/3をニューヨーク州が、残りをIBMが投資した。これでCNSE(College of Nanoscale Science & Engineering)を設立し拠点の母体とした。
(3) その後大手企業(SEMATEC、東京エレクトロン、Applied Materials等)との大型共同研究を実施。その状況が世界に認識されて、現在250社の共同研究企業が参加する一大拠点となった。
(4) 設立後の運用投資は総額で4000億円超といわれるが、ニューヨーク州は設立時のみならずその後も投資を続け、約1/4を占める。
(5) アルバニー全体で500名規模の研究者が常駐しており、金のみならずエンジニアの知恵も集結している。常駐者間の交流は研究進捗に極めて有効に作用している。研究のためのハードウェアのみならず、テレビ会議システムのようなネットワーク構築がなされ、距離が障害とならない交流が実現している。

(6) 研究開発の体制は2通りあり、1つはCNSEがホスト役を勤めて250社に及ぶ産業界の研究開発を行う体制であり、アンブレラ方式と呼ばれる産産連携は極めて緩い。もう1つは、IBMとCNSEがアライアンスを組み、ここにはニューヨーク州も参加できないクローズの体制である。
(7) 研究開発対象はシリコンのみならず、ナノサイエンス、ナノエンジニアリング、ナノバイオサイエンス、ナノエコノミクスの名の示すとおり、ナノと付く対象をすべて網羅している。半導体はシリコンを中心に始まったが、現在は周期律表の8割近い元素を用いて極めて広くなっている。

 ヤコビ主任研究員がお話された「IMECマイクロエレクトロニクス拠点」の設立経緯、発展経緯、戦略等は、纏めると下記のようになります。
(1) IMECの設立は、カトリック大学Leuvenの教授が、フランダース中央政府に働きかけて実現したという経緯がある
(2) 1984年設立時の資金は75億円といわれるが、その1/2以上をフランダース中央政府が投資している。マイクロエレクトロニクス研究開発センターとして、独立した組織形成を理念とした。研究はナノテクノロジーに特化しており、IMECを大学と企業の中間に位置付け、大学のためには長期的な基礎研究を、企業のためには応用に特化した短期的開発を実施している。


(3) 2008年の予算は320億円とされているが、14%をフランダース中央政府が投資している。企業の投資のうち77%は世界中に亘っており、地元フランダース企業投資は15%である。
(4) IMEC総人員は1750名を数えるが、63%にあたる1109名は正規社員であり、非正規社員540名(31%)のうちの355名(66%)は企業からの研究者である。
(5) 投資企業の主製品はCMOSであるため、CMOS研究をコアとせざるを得ないが、半導体を小さくしていく研究を指向している。その他にCMORE(More than Moore)と称して、無線通信、バイオ、太陽電池、Power & LEDも対象としている。半導体を構成する元素は増加の一途を辿り、製造コストも上昇している。これに対処するために、IMEC単独ではなく、大学、企業等に広く参加してもらうコストシェアリングシステムを導入している。
(6) 研究体制として、@共同研究(1ないし2社間及び数社間)、A技術移転(特許管理)、Bトレーニングの3つがあり、特に特許管理は厳しく行っている。
(7) 独立した研究開発体制を維持するために、CMOS以外のCMOREの研究開発のためには、それを必要としている企業と共同研究を行う体制とし、フランダース中央政府には、研究ポテンシャルの高さを説明すると共に、スピンアウトした企業の数を増加させ、地元の雇用創出に貢献することで納得してもらっている。

お話の後の議論の中で出た内容の主だったものを記載すると、下記のようになります。
(1) 産業化のために産学官連携は1つの大きな選択肢であるが、連携を極めて効果的に機能させて産業化を はかるための要素は下記のように纏められる。
@ 地域の自治体(Local Government)が積極的に投資している(アルバニーはニューヨーク州、IMECは フランダース中央政府)。Local Governmentは、日本のような文科省と経産省の縦割り組織ではなく、 両省が一体となった組織となっている(学と産が連携し易く連携効果の出易い官の組織)。
A 大学が拠点の中心的役割を演じている。
(2) 両拠点の違いも下記のように見られる。
@ 拠点設立の経緯が異なる(アルバニーは企業(IBM)とニューヨーク州の思惑、IMECは大学(Leuven)と フランダース中央政府の思惑)。
A 設立経緯の違いによって、両者の学と産の研究者の構成が異なる(アルバニーは企業が、IMECは大学が 多い)。
B 半導体産業集積度が異なる(アメリカ東海岸に比べるとベルギーの集積度は小さい)。
C IMECのほうがテクノロジートランスファー(特許管理)が厳しい(?)。
(3) 日本で成功させるためのキーワードに関しては、あまり深く議論されませんでしたが、下記のように なると思います。
@ つくばに「つくばイノベーションアリーナ(TIA)」が設立された。エレクトロニクス研究拠点であるが、 先人の良いところを取り入れて世界に通用する産業化拠点として欲しい。そのための1つのキーワード は「関連省庁の縦割り施策」の排除である。第6回のZacばらんで文科省の増子宏氏の話に出た戦略決定に 期待したい。
A 東北大学でも「Vertical MOSFET & 3D-LSI Technology」を核とし、アンブレラ方式を取り入れた拠点を 作りたいという遠藤教授の意気込みにも期待したいところである。



【第七回進行係】伊藤弘昌(JSTプラザ宮城 館長)
【世話係】小池美穂(JSTプラザ宮城 事務参事)

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